手放してみたら・・・

 

あるところに、いつも不安にとらわれてしまう男がおりました。

今日も、ちょっとしたことから「不安の怪物」が現れ語りかけます。

「さあ、またワシと綱引きをしよう。ワシは力が強い。本気で抵抗しないと大変なことになるぞ」

 

気付けば2人は一本のロープを握り、その間には深い谷底が口を開けています。

「不安の怪物」に引っ張られて落ちればタダでは済みそうにありません。

男は必死で抵抗します。

しかし「不安の怪物」というだけあって本当に強い。

ジリジリと、深い谷のほうへ引っ張られてしまいます。

それでも、もちろん抵抗を止めるわけにはいきません。

 

そうやって、もう何時間が過ぎたでしょうか。

男もクタクタです。

ついに谷底は目の前、

もうダメか!と思った、その時

「手を放して!」という誰かの叫び声。

男はその声に驚きつつも

正直、もう抵抗することに疲れ果てていたのもあって、

思い切ってロープを放します。

 

ロープは、もの凄い勢いで「不安の怪物」のもとへ引き寄せられます。

しかし、それはロープだけです。

男は何ともありません。

しかも、深い谷があるので「不安の怪物」は男に近づくこともできません。

ただ、恨めしそうに、ちょっと悲しそうに男を見つめるだけです。

 

 

「不安の怪物」は、確かにそこにいるけれど、

自分には何も手出しできないことを理解した男は

「不安の怪物」を横目に、大好きな花の世話に

いそしみましたとさ。

投稿者プロフィール

林 和(はやし やまと)
林 和(はやし やまと)くれたけ心理相談室(広島支部)心理カウンセラー
広島市全域で対面カウンセリングに対応いたします。またオンラインカウンセリングは全国(全世界)より承ります。

コメントはお気軽にどうぞ