たまに寓話②「天使と悪魔?」

あるところに、いつも自分を責めてしまう少年がおりました。
今日は、山に住むおばあちゃんのところへケーキを届けます。
「おばあちゃん、ケーキ大好きだからな。早く届けてあげなくちゃ。」

少年が急ぎ足で駆けていたところ・・・
「あっっっ!」
急にやぶから飛び出してきた子ウサギを避けようと、
ケーキを持ったまま転んでしまいました。

 

こんな時、いつもすぐに、心の中にアイツが現れます。

せめぞう)「お前、またやっちまったな!だから、周りに気をつけろっていっつも言ってんだよ!大事なケーキが台無しじゃないか!何やってんだ!!お前のせいで、ばあちゃん美味しくケーキが食べられなくなったぞ!どうすんだ!お前はほんとにダメなヤツだな!!」

少年)「そうだ。ボクのせいだ。いっつもいっつもドジで、ボクが全部悪いんだ・・・。おばあちゃんを悲しませるボクなんて、もう居ないほうがいいかもしれない・・・」

 

???)「ちょっと待って!」

少年が今にも失意のどん底に落ちてしまいそうな、その時!
また別のだれかが現れました。

 

ホメルン)「これは見過ごせない状況ね。本当にあなただけのせいかな?本当にあなたは悪い子なのかな?いったん落ち着いて、もう一度、一緒に振り返ってみない?」

少年)「え?う、うん・・・」

ホメルン)「まず、あなたはおばあちゃんにケーキを届けるために走っていった。これは悪いことかな?」

少年)「・・・おばあちゃん、ケーキが大好きだから・・・少しでも早く食べてもらいたくて、走ってたんだ・・・」

ホメルン)「じゃあ、いきなり子ウサギが飛び出してきたとき、あなたは避けようとして転んだように見えた。これは悪いことかな?」

少年)「・・・急に飛び出してきたから、ぶつかりそうになって、、でもそのままぶつかったら小さい子ウサギがケガをすると思ったから、必死で避けたけど、バランスをくずしてコケちゃったんだ・・・」

ホメルン)「しかもその時、あなたはとっさにケーキをかばって自分の顔から地面に倒れた。おかげで、ひどい顔になってるけど、よく見て。ケーキはちょっと角がつぶれたけど、ほぼ無事よ!」

少年)「え?ほんとだ!よかった~」

 

ホメルン)「聞いてると、どれも良かれと思ってやったのよね。あなたはむしろ、とても心優しい少年だと思うわ。
さて。じゃあ、なんであなたは悪くもない自分をそんなに責めることになったのか・・・な!」

せめぞう)「ぎくぅ!!え?あ、い、いやオレはその・・・」

ホメルン)「あんた、わたしと同じ、この子の心の中の一部でしょ!なんで自分自身を傷つけるようなこと言うのよ!そんな追い込んで何が楽しいの!事と次第によっちゃ、許さないわよ!!」

せめぞう)「ご、、ごめんよ~~。オレはただ、次は自分に同じ失敗を繰り返してほしくなかっただけなんだよ~。それをちゃんと分かってもらうように伝えようとしたら、ついつい力が入り過ぎちゃって、どんどん言い方がきつくなっちゃって、責めるみたいになっちゃう癖があって、自分でも止められないんだよ~。本当にごめんよ~。」

と、案外、打たれ弱かったせめぞうは、大泣きしながら謝ります。

 

少年)「え!ボクがもう同じ失敗をしないように、ボクのためを思って言ってくれてたの?な~んだ、そうだったのか!」

少年は、せめぞうが自分を責めていたことの本来の意図を知って、ホッとすると同時に、なんだか少し嬉しくもなりました。

ホメルン)「あんたも本当は、この子のことが心配で、良かれと思ってやってたことなのね。でも、せっかくいいことしようとしてるんだから、そこまで分かってるんだったら、次からは言い方を改めていこうよ。わたしも側で見守っててあげるからさ。」

せめぞう)「分かったよ~。ありがとう~。次からは、ちゃんと本当の思いを分かってもらえるように頑張るよー。」

 

少年は、本当は心優しい『せめぞう』と、いつも見守ってくれている『ホメルン』の存在を改めて心の中にしっかりと感じながら、再びおばあちゃんの家へ向かって元気に駆け出しました。

ケーキは変わらず大事に抱えながら、
そして今度はちょっとスピードを落として
周りにしっかり気をつけながら・・・。

 

 

投稿者プロフィール

林 和(はやし やまと)
林 和(はやし やまと)くれたけ心理相談室(広島支部)心理カウンセラー
広島市全域で対面カウンセリングに対応いたします。またオンラインカウンセリングは全国(全世界)より承ります。

コメントはお気軽にどうぞ